CS分析
CS分析は、CS調査(顧客満足度調査)で得た詳細評価や総合評価のデータを解析し、顧客満足度を上げるためにはどの要素を改善すべきかを把握する方法です。
CS分析とは
文具メーカーがシャープペンシルの顧客満足度を明らかにするために、書きやすさとデザインの満足度、次回購入意向を調べるアンケート調査を行いました。
書きやすさ、デザインどちらも100人中25人が満足と回答したので満足度は25%でした。
皆さんは、書きやすさとデザインのどちらを優先的に改善すべきだと思いますか。
ほとんどの方はどちらも満足度が低いので両方とも改善すべきだ、と答えるかも知れません。
しかし、その解答は必ずしも正しくありません。その理由を考えるために、書きやすさ、デザインと次回購入意向との関係を調べました。
A 書きやすさを「満足」とした人の次回購入意向は、ほとんどの人が「ある」と回答した。
一方「不満」とした人の次回購入意向は、ほとんどの人が「ない」と回答した。
B デザインを「満足」とした人の次回購入意向は、「ある」と「ない」がほぼ同数、
「不満」とした人の次回購入意向も「ある」と「ない」がほぼ同数だった。
上記のAとBからいえることを図解すると、次のようになります。

CS分析(Customer Satisfaction Analysis)は、「総合評価(この例では購入意向)を高めるのに重要な要素で評価が低い要素を改善する」という考え方をします。この考え方に基づけば、購入意向を高めるためには、デザインの改善より書きやすさの改善を先にするが正解となります。

書きやすいと思った人は次回も購入してくれる。
デザインが良いと思った人は次回も購入してくれるとは限らない。
CS分析の進め方
CS分析は、顧客満足度調査に基づいて、顧客満足度を上げるために改善すべき要素を把握する方法です。
顧客満足度で得た機能、サービス等(詳細要素)の評価や総合評価のデータの解析は、次のようにして進めていきます。
- 詳細評価の各要素について、満足度と重要度を明らかにする。
- 各要素の満足度を縦軸、重要度を横軸とした相関図を作成する。作成した相関図をCSグラフという。
- CSグラフにおいて右下に位置する要素は、重要度が高いのに満足度が低いので改善要素となる。
CSグラフとは
各要素の満足度を縦軸、重要度を横軸として作成した相関図をCSグラフといいます。
CSグラフにおいて右下に位置する要素は、重要度が高いのに満足度が低いので改善要素となります。





右下に位置する要素ほど
改善度は高くなるよ。
要素10は改善要素だよ。
CS分析の例題
| テーマ | 旅館満足度調査 |
| 調査目的 | 宿泊者減少の原因を顧客満足度の観点から探り、今後のリピート宿泊者数増大の一助とすることを目的とする。 |
| 把握内容 | 総合的評価(再度宿泊したい、他人に紹介したいなど)を上げるためにはどのような要素を改善すればよいか。 |
質問の構造化
質問数が多い場合は、質問項目を構造化して、詳細評価、中間評価、総合評価に分けます。


要素の絞り込み
顧客満足度調査では、きめ細やかな改善ができるよう数多くの要素について質問します。
質問した要素の中にはコスト面、物理的制約などから改善できない要素がありますので、質問はしてもCS分析ではこれらの要素を外すのがよいでしょう。旅館満足度調査の部屋に関する要素の中で、部屋の眺望、部屋の広さは改善できない要素と考え除きました。
CS分析で把握する内容
- 総合評価(今後の利用意向)を高めるのに重要な中間評価は何かを把握する。
- 重要な中間評価(この例題では、部屋に関する総合評価)を高めるのに重要な詳細評価は何か、改善する詳細評価は何かを把握する。
CS分析におけるデータ
CS分析で適用できるデータは段階評価のデータです。
段階評価で得たデータはカテゴリーデータ、数量データのどちらでも取り扱うことができます。
CS分析における満足度
段階評価のデータから満足度を算出する方法を示します。
① カテゴリーデータとして扱う場合は、満足度は回答割合
② 数量データとして扱う場合は、満足度は平均値
※平均値を適用する場合は、段階評価のデータを次に示す得点で計算します。


旅館満足度調査における部屋の詳細評価の満足率を見ましょう。
満足度は5段階評価をカテゴリーデータとして、「満足」と「やや満足」を合わせた2top割合で算出しました。


部屋の要素について満足度が最も高いのは、「寝具の清潔さ・寝心地」で、次に「備品の装備」が続く。満足度が最も低いのは「部屋の温度」、次に低いのは「照明の明るさ」である。
2top満足度は集団の片側(満足の部分)を示す代表値、平均値は集団の真ん中(満足~不満までの得点平均)を示す代表値です。CS分析の目的は、満足度を上げる(不満を下げる)ことにあるので、集団の片側に着目します。したがって、満足度を把握するには、平均値より2top満足度のほうがよいでしょう。
CS分析における重要度
重要度の測定方法は2つあります。
① 重要度を調査対象者に回答させる(回答重要度と呼ぶ)
例.あなたが旅館に宿泊して部屋を評価する際、次に示す要素についてどの程度重視しますか。


② 重要度を解析(相関分析)から把握する(解析重要度と呼ぶ)
各要素と総合評価との相関係数を解析重要度(以下重要度と省略)とします。
相関係数は数量データに適用できる手法です。
相関係数は選択肢に与えられた得点を用いて算出します。
相関係数の値が大きい要素ほど総合評価の満足度を高めるのに重要な要素であると考えます。
旅館満足度調査の部屋に関する各要素の重要度を示します。
重要度は部屋の各要素と部屋の総合評価との単相関係数です。


部屋の要素について重要度が最も高いのは「部屋の印象」で、次に「部屋のにおい」が続く。
重要度が最も低いのは「部屋の温度」、次に低いのは「照明の明るさ」である。



この表の重要度は、部屋の総合満足度との単相関係数の値。だから、重要度が高い要素ほど、部屋の総合満足度を上げるのに重要ということだよ。
重要度と相関係数の関係
相関係数の値が大きい要素は総合評価の満足度を高めるのに重要であると述べましたが、このことについて考えてみましょう。
上記の相関係数が最大の「部屋の印象」について、「部屋に関する総合評価」とのクロス集計表を示します。


部屋の印象について「満足」を回答した87人中84人が総合評価にも「満足」。
また、「やや満足」を回答した156人中132人が総合評価にも「やや満足」と回答。
一方、部屋の印象を「不満」とした107人中87人が総合評価にも「不満」と回答している。
クロス集計表をみると、部屋の印象に満足なら部屋の総合評価は満足、逆に、部屋の印象に不満を持てば部屋の総合評価は不満、という関係がみられます。このことから相関係数は大きい値を示し、部屋の印象は総合評価の満足度を高めるのに重要であると判断できます。


総合評価を質問してないときの重要度
総合評価を質問していないときは、各回答者について詳細評価の平均値を算出し、その値を総合評価とします。
例えば、部屋に関する質問で、部屋の総合評価を聞いていなければ、各回答者の総合評価の把握には、下記のようにします。


CSグラフ
各要素(詳細評価項目)の満足度を縦軸、重要度を横軸として作成した相関図をCSグラフといいます。
満足度の平均値を横線、重要度の平均を縦線で引き、CSグラフを4つの領域に分けます。右下に位置する要素(詳細評価項目)は、重要な要素であるのに満足度が低いので改善すべき要素です。
旅館満足度調査のCSグラフを作成しました。


改善度指数
各要素の改善度はCSグラフ上の位置で決まり、その強弱を示す値が改善度指数です。
改善度指数は次に示す距離と角度で決まると考えます。
① CSグラフ上の原点から改善度を計算する要素までの距離
② 【 原点と要素とを結んだ線 】と【原点と右下最下点を結んだ線 】との角度
この線を基準線とよぶことにします。
距離が長く、角度が0に近いほど、改善度指数は大きくなると考えます。
距離、角度の計算は、満足度、重要度を偏差値にしたCSグラフで計算します。


改善度指数は次の手順で算出します。
① 満足度、重要度の偏差値を算出する。
② 偏差値データでCSグラフを作成する。
③ 偏差値CSグラフの中心から散布点までの線を引き、距離を測る。
④ CSグラフの座標(縦偏差値20、横偏差値80)と中心を結んだ基準線を引く。
⑤ ③の線と④の基準線との角度を測る。
⑥ 修正角度指数を求める。
⑦ ③の距離と⑤の修正角度指数から、改善度指数を算出する。
偏差値の算出
満足度(%)、重要度(相関係数)は、数値の単位が異なります。
数値の単位が異なるデータを取り扱う方法に偏差値があります。
偏差値は次式によって求められます。
偏差値=10×(データ-平均値)÷標準偏差+50
<計算例>
部屋の印象の満足度偏差値=10×(69.4-72.9)÷9.6+50=46.4
部屋の印象の重要度偏差値=10×(0.8670-0.5834)÷0.1430+50=69.8
偏差値は点数で表せ、20~80の間の値となります。
※ 異常値(外れ値)がある場合、この範囲に収まらないことがあります。
部屋に関する詳細評価項目の満足度と重要度の偏差値を示します。


偏差値CSグラフの作成
縦軸、横軸どちらも、20~80の目盛でグラフを作成します。


散布点までの距離


角度の計算
角度の計算は煩雑です。Excelの関数での計算の仕方を説明します。
「部屋の印象」を例とします。
要素の点の位置(座標)を(x,y)とします。「部屋の印象」を例とします。
要素の点の位置(座標)を(x,y)とします。


修正角度指数の計算
基準線からの角度を図に示すように、90度は0、45度は0.5、0度は1と変換します。この角度を修正角度指数と呼ぶことにします。 数式では、(90度-角度)÷±90度で求められます。


本来の角度は小さいほど改善度指数は大きくなる。
修正角度指数は大きくなるほど改善度指数は大きくなる。
修正確度指数は、-1から1の間の値である。
改善度指数の計算
改善度指数は、原点からの距離と修正角度指数を掛けることによって求められます。
改善度指数=距離×修正角度指数
部屋に関する詳細評価の角度、修正角度指数、距離、改善度指数を示します。


改善度指数は、「10以上 即改善」、「5以上 要改善」、「5未満 改善不要」です。
部屋の総合評価を上げるためには部屋の印象、部屋のにおいは即改善しなければならないとういことが分かりました。
拡張的改善度指数
改善領域を決める縦線は満足度の平均値(偏差値は50点)、横線は重要度の平均値(偏差値は50点)です。縦線、横線を決める値に平均値を適用しないことも可能です。
例えば満足度の平均値は45%、相関係数の平均値は0.65であったとします。縦線、横線の値は45%、0.65ですが、これを分析者が設定する35%、0.6にして改善度指数を算出することができます。(これを拡張的改善度指数と呼ぶ。)
改善度の計算は偏差値を計算するところで平均値を設定値に置き換えるだけです。5つの詳細評価の満足度、重要度について、改善度指数と拡張的改善度指数を算出します。


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