第5回 経時データの有意差検定は、「t検定」or「 混合効果分散分析」どっち?

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 このシリーズでは、アイスタット統計セミナー受講者の「知っているようで、意外に知らなかった」という声をもとに、統計の基礎や分析者が陥りやすい統計の落とし穴などについて解説していきます。

    < 監修:アイスタット代表取締役会長 菅 民郎

第5回では、「経時データ」に「有意差検定」を適用する場合、落とし穴があることを解説します。      

◆経時データとは◆
n個の個体(被験者)の特性を時間あるいは条件を変えて繰り返し測定し、得られるデータのことです。

データには「対応のないデータ」と「対応のあるデータ」があり、右表のように0ヶ月、1ヶ月後、2ヶ月後・・・など、同一人物で経過を追って測定したデータを「対応のあるデータ」と言います。

◆経時データの解析◆
経時データにおいて、経過を追って時点間の平均に有意差があるかを検証する場合、解析手法は経時データ分散分析混合効果分散分析ともいう)を適用します。

経時データ分散分析(混合効果分散分析ともいう)で適用できるデータは、

「対応のあるデータであること」「欠損値(不明データ)が含まれていないこと」が必須条件です。

もしデータに欠損値がある場合は、そのサンプルを解析対象から除外して解析します。

上記データについて平均を算出しました。
経時データ分散分析(混合効果分散分析ともいう)は、色々な角度から平均を比較することができます。

① 全体の経時変化・群間有意差の検証

全体の「時点変化」または「群比較」の有意差は、分散分析で調べます。
分散分析で有意差が見られたとき、多重比較検定で「個々の時点間相互」または「個々の群間相互」の有意差を把握します。

② 群ごとの時点変化 / 時点ごとの群比較

各個体に群情報がある場合、
群(ここでは年代)ごとに時間点の平均に有意差があるかも検証できます。


落とし穴にご注意を!

経時データで、全体の経時変化・群間有意差の検証を行う場合、t検定やノンパラメトリック検定は使ってはいけません!

下記は、経時データ(降圧薬の効果)に「t検定」を適用し、各時点の血圧の平均値に違いがあるかを調べた結果です。n数が30未満のため、ノンパラメトリック検定(サインランク符号和順位検定)を適用しました。

各時点間(2項目間)はp値<0.01より、「各時点の血圧の平均値に違いがあるといえる(有意差がある)」と判定できます。しかし、「どの時点から異なるか」「どれほど異なるか」は、この結果から判定することはできません。これらを明らかにしたい場合は、経時データ分散分析(混合効果分散分析ともいう)が最も適した解析手法となります。
近年の学術論文においても広く採用されている解析手法です。


経時データの解析は、明らかにしたいこと(解析目的)や使用するデータ形式により、解析手法が異なります。
経時データを有意差検定する場合、「t検定」と「混合効果分散分析」を正しく使い分けしましょう。

解析結果:全体の経時変化・群間有意差の検証(アイスタットの出力結果)

多重比較検定には、最初の時点と次以降の時点を比較する片側と全ての時点間の有意差を調べる両側があります。

時点間は、基準時期の測定値より他時期の測定値が増加(減少)しているかを検証することを目的としていることが多いように思われます。
この例では0ヶ月を基準として、1ヶ月後は0ヶ月に比べ減少しているかを明らかにすることが目的です。そのため、片側検定(減少)で行いました。片側検定の多重比較はダネットを適用します。

解析結果:群ごとの時点変化(アイスタットの出力結果)
解析結果:時点ごとの群比較(アイスタットの出力結果)

さらに詳しい解説をご希望の方はこちら ➡ 経時データ分散分析 | アイスタット

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