因子分析から明らかにできること ≪ 2/3 ≫
関係式の係数/因子負荷量
因子分析の出力内容は主成分分析と同様に、関係式の説明力、関係式の係数、各個体の得点です。
関係式の係数を主成分分析は固有ベクトルと言いましたが、因子分析は因子負荷量と言います。
各個体の得点は、前者は主成分得点、後者は因子得点と言います。
コンビニアンケートデータに因子分析を行いました。
右記A表に因子負荷量を示しました。因子負荷量を解釈するために、B表のように並べ換えました。
どの因子も、プラスとマイナスの値が混在しており、総合力を表す潜在変数がないことがわかります。
因子負荷量は各因子と観察変数との相関の度合いを示す、-1から+1の間の値です。
因子負荷量の値から各因子がどのような潜在変数であるかが把握できます。
値が0.5以上の因子負荷量をみると、
1番目の因子は「品揃えが豊富」「取次サービスが充実」「新鮮である」「味がよい」で、この因子は商品・サービスを評価する潜在変数であるといえます。

2番目の因子は「イメージがよい」「レイアウトがよい」でこの因子は店舗を評価する潜在変数、
3番目の因子は「処理時間が早い」「品切れがない」でこの因子は業務のシステム化(ルーチン化)を評価する潜在変数、
4番目の因子は「従業員態度がよい」で従業員を評価する潜在変数だといえます。
主成分分析において総合力以外の主成分は、固有ベクトルが0.5以上の大きな値、-0.5以下の小さな値が存在し、主成分は相反する概念の潜在変数と判断しました。因子分析は当該因子において因子負荷量が0.5以上のものがあると-0.5以下が存在せず、一つの因子が一つの潜在変数を表すと判断します。
関係式の説明力
因子分析をパソコンソフトで行うと下記が出力されます。

累積寄与率が適用した潜在変数までの説明力を示しています。
固有値は、各因子の説明力で、合計すると観察変数の個数に一致します。因子は固有値が大きい順に第1因子、第2因子、・・・、と名称します。
寄与率は、各固有値を観察変数の個数で割った値です。
累積寄与率は、当該因子までの寄与率の合計です。
主成分分析の潜在変数個数は3以下にするのがよいと言いました。
これに対し、因子分析の潜在変数の個数は、1つの因子が1つの潜在変数となるため潜在変数の個数は多くなります。
第3因子まで適用した場合の説明力は61%で先生が基準にいている60%を上回っていますが、ここでは第4因子までを選択しました。
注1.固有値が1以上の因子は重要という基準で因子を選択するのも一つの方法です。
注2.前のB表によって求められた2乗和は固有値に一致します。
因子分析の関係式/因子得点
数学、英語の得点と因子得点との関係
因子分析の関係式について調べてみます。
下記に数学と英語の成績を示しました。
数学という科目は理系能力だけでなく文系能力も、逆に英語は文系能力だけでなく理系能力も要求されるはずです。そこで、例えば数学という科目の得点を右記図に示すように分解できないかと考えます。
この式における文系能力得点は、数学の文系能力得点に対するウエイトと、その生徒の文系能力得点との積で表されると考えます。理系能力得点も同様に、数学の理系能力に対するウエイトと、その生徒の理系能力得点との積で表されると考えます。

因子分析は右記に示すように、ある科目の得点がいくつかの能力に分解できるという仮説をたてて、この関係式のウエイトや能力得点を求めることを目的とするものです。
この関係式のウエイトが因子負荷量、各人の能力得点が因子得点です。
基準化した得点を能力別得点に分解
実際には、基準値にしたデータについて因子分析は行われます。
右記に示すウエイトが因子負荷量、各人の能力得点が因子得点となります。
因子分析は基準化した得点を能力別得点に分解する手法だと言えます。

主成分分析は合成の分析、因子分析は分解の分析
因子負荷量、因子得点の求め方の考え方をお話しします。
この例における英語の得点を、下記画面Aに示す記号で表してみます。
ここで、主成分分析の主成分の式を思い出してください。主成分分析では下記画面Bに示すように、各科目の得点を合成して、総合力の得点を作成しています。これに対し因子分析は、Aに示すように、ある科目の得点をいくつかの能力に分解しています。このようなことから、主成分分析を合成の分析、因子分析を分解の分析という人もいます。

共通性
前の関係式をみてください。Bの主成分分析の場合、関係式の右辺はa1、a2 が未知数でx1、x2 が既知数です。これに対しAの因子分析の場合、関係式の右辺は全て未知数です。どの多変量解析も関係式の係数は連立方程式によって求められます。因子分析のように未知数が多すぎると方程式が解けません。
既知情報を増やせば解法できるので、因子分析は次に示す方法で既知情報を増やし方程式を解き、因子負荷量と因子得点を求めています。
前節「関係式の係数/因子負荷量」のB表で共通性の結果を示しました。共通性は因子負荷量の2乗和です。「品揃えが豊富」で計算例を示すと、0.94×0.94 + 0.13×0.13 + (-0.07) × (-0.07) +(-0.01)×(-0.01)=0.91 です。
因子負荷量は未知ですが共通性を既知とすれば一挙に既知情報が増え、方程式は解法できます。
共通性を決めるのは分析者、すなわちあなたです。あなたはとりあえず共通性の値はこのくらいだろうと数値を定めます。その数値で因子分析を行い、因子負荷量を求めます。因子負荷量が求まれば共通性が計算されます。その共通性で再度因子分析を行います。このことを繰り返し行うと共通性はある一定の値に近づいて行きます。これ以上因子分析を行っても共通性の値は変わらないというところで因子分析をストップし、最終の結果を求める因子負荷量、因子得点とします。
最初に定める共通性を共通性の初期値といいます。因子分析を何回も繰り返すことを反復推定といいます。
反復推定は大変な作業と思われますが、全てコンピュータが計算してくれます。あなたがするのは共通性の初期値を定めるだけです。定めろと言われても難しく、次の3つのいずれかの値を選択することになります。
① 共通性の初期値:1
② 共通性の初期値:相関行列の各列の最大値
③ 共通性の初期値:重相関係数の2乗 ➡当該変数をY、他変数をXとした重回帰分析の決定係数

変数相互の相関係数と因子負荷量の関係
方程式によって求められた因子負荷量は変数相互の相関を集約しています。

軸の回転
下記のデータに因子分析を行い、因子負荷量を求めると下記の左図になります。

第1因子は3科目ともプラスなので総合学力、第2因子はプラスとマイナスなので文系、理系と相反する概念の因子になります。この結果は主成分分析と同じで、因子分析が目的としている結果になっていません。
そこで、原点を中心に座標軸を回転し、回転後の軸に3つの科目ができるだけ重なるようにします。回転後の軸で、3科目の位置をみると右図のようになります。
因子の解釈は、因子負荷量の値が大きい変数をみて行います。第1因子をみると3科目ともプラスの値になりましたが、国語と英語の値が大きくこの因子は文系能力、第2因子は逆に数学の値が大きく理系能力と判断することができます。
数多くの変数について因子分析を行い、軸を回転したときどの因子も、いくつかの因子負荷量の値は大きく、残りの変数の因子負荷量は0.5を下回る小さな値になります。このことを単純構造といいます。
回転の方法にはいろいろありますが、代表的な手法はバリマックス法と言います。