共分散構造分析

目次

共分散構造分析のモデル ≪5/6 ≫

事例1:偏相関係数型モデル

≪例題4≫
 次のデータは、中学生20人について、学年、身長、漢字個数(100個中何個の漢字を知っている)を調べたデータです。身長と漢字個数の単相関係数は0.418でした。身長が伸びれば知っている漢字個数は増えるかの因果関係を調べてみましょう。

【データ】

説明変数相互の単相関係数と偏相関係数を示します。

 下記のA図は単相関係数のパス図で、3変数間の関係を見たものです。
単相関係数をみると、学年と漢字個数は0.788、身長と漢字個数は0.418で、学年が上になるほど、身長が高くなるほど、知っている漢字個数は多くなるといえます。
2変数間の偏相関係数は、その他変数の影響を除去したときの相関です。
B図、C図、D図は共分散構造分析におけるパス図です。誤差変動(円)を双方向の矢印で結んだ値は、偏相関係数の値となります。

偏相関係数みると、学年と漢字個数は0.735、身長と漢字個数は0.002で、学年が上になるほど知っている漢字個数は多くなりますが、身長が高くなるほど漢字個数は多くなるといえません。
学年と身長に相関関係があり、このことにより身長と漢字個数は高くなり、両者の関係は見かけの相関が発生しています。偏相関係数は学年の影響を除去して、身長と漢字個数の関係を見たもので、真の相関を見出そうとする解析手法です。

事例2:重回帰分析型モデル

≪例題5≫
 野球選手20人について、100m走、懸垂回数、握力の体力測定値と打率、ホームラン数の成績を調べました。打率やホームラン数の成績を上げるために重要な体力は何かを調べてみましょう。

[ 1 ]

目的変数は打率、説明変数は100m走、懸垂回数、握力で、説明変数間の相関がないと仮定する重回帰分析を行います。
回帰係数(パス係数)と決定係数R2 (R2乗)が出力されます。

[ 2 ]

目的変数は打率、説明変数は100m走、懸垂回数、握力で、説明変数間の相関があると仮定します。

(双方向の矢印を引くと重回帰分析の結果と一致。) 自由度0(飽和モデル)で、適合度指標、検定は行えません。
この結果は、解析手法「重回帰分析」の結果と一致します。

[ 3 ]

目的変数は打率とホームラン数、説明変数は100m走、懸垂回数、握力で、説明変数間の相関がないと仮定します。

[ 4 ]

目的変数は打率とホームラン数、説明変数は100m走、懸垂回数、握力で、説明変数間の相関があると仮定します。

事例3 媒介プロセス重回帰分析モデル

[A]が[B]に、[A][B]が[C]に影響を及ぼす、といった形の重回帰分析をすることがあります。
例題1の大相撲データについて、パス図を描くと次になります。

 食事量が増えると体重が増え、食事量や体重が増えると稽古量が増え、食事量、体重、稽古量が増えると勝数が増えると解釈できます。GFIは0.9をやや下回っていますが、決定係数(R乗)は基準としている0.5を上回り、このパス図は、力士が勝数を増やすための教訓となります。
媒介プロセスの因果関係のたとえを紹介します。

【風が吹けば桶屋が儲かる】
風が吹けば砂埃のために目を病む人が多くなり、目を病んだせいで失明すれば音曲で生計を立てようとするから三味線を習う人が増え、三味線の胴に張る猫の皮の需要が増えます。 そのため、猫の数が減少し、猫が減れば猫が捕まえる鼠の数が増えます。鼠は桶をかじるから桶がよく売れるようになり、桶屋が儲かることから、桶屋が儲かる因果関係をいった昔話からでたことばです。

事例4:因子分析型モデル

≪例題6≫
 新人タレントを採用するために、芸能プロダクションはいろいろなオーディションを行っています。
下記の表は、あるオーディションにおける受験者の歌唱力、瞬間芸、ものまね、踊り、容姿の成績(10点満点評価)を示したものです。この成績から、各人のタレントとしての総合能力、アイドル系・お笑い系の能力を把握し、採用の有無、採用後のキャラクター作りの決定を判断したいと思います。

検証的因子分析を行います。
因子分析の回転には直交回転斜交回転が有ります。前者は因子間(潜在変数間)の相関が0である、後者は0でないことを仮定しています。

最初に、直交回転の検証的因子分析を行います。

次に、斜交回転の検証的因子分析を行います。
因子間を双方向の矢印で結ぶと斜交回転となります。

総合能力の因子を追加して、直交回転の検証的因子分析を行います。

自由度はマイナスなので検定はできませんが、パス係数の解釈はできます。

事例5:多母集団の同時分析モデル

≪例題7≫
 下記のデータは、ある会社の6つの営業所におけるA製品とB製品の売上額、広告費、販売員数です。
製品の違いによって、売上に対する営業活動の影響度が違うように思われます。
両製品の営業活動の違いを明確にしてください。

多母集団の同時分析モデルは、2つの母集団の因果関係の構図、違いを明確にする方法です。

A製品は広告費の効果、B製品は販売員数の効果が顕著で、両者の営業活動のあり方に違いが見られました。

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