解析事例・アンケート

目次

消費者セグメンテーション

消費者セグメンテーションとは

消費者セグメンテーションとは、消費者を分類する方法です。

その背景にあるのは「消費者のニーズの多様化」です。

市場が成熟化し生活者のニーズが多様化している現在、万人向けの商品を開発し販売することは効果的とはいえません。なぜなら全てのニーズを一度に満たそうとすればするほど商品コンセプトは平均的なものになってしまいます。

そこで、求められるのが消費者セグメンテーションです。

戦略的に消費者のセグメンテーションを行い、セグメントにフォーカスしてプランをたて、マーケティング活動をすれば、より効果的にビジネス成果を得ることが可能となります。

消費者セグメンテーションの目的

生活行動、購買行動と新製品選択との関係を明らかにしたいことがあります。しかしながら、人々の生活行動、購買行動は多種多様で、両者の因果関係の解明はやっかいなテーマといえます。

そこで数多くある生活行動や購買行動の項目に多変量解析を適用し消費者をセグメントします。

どのようなセグメントに属する人が、どのような  新製品を嗜好するかを明らかにすることを目的とします。

消費者セグメンテーションの手順と解析方法

消費者のセグメント化は多変量解析を適用して行います。統計解析が作成したセグメントに名前を付けねばなりません。この作業は分析者であるあなたが付けます。

ここでは、セグメント化に適用する解析手法とネーミングの仕方について学びます。

消費者セグメンテーションの解析手順

数量化3類とは

数量化3類はアンケート調査の回答者と回答選択肢を得点化する解析手法です。

回答の仕方が似ている消費者には類似した得点、似ていない消費者には異なる得点をつけます。この得点をサンプルスコアといいます。
回答のされ方が似ている選択肢には類似した得点、似ていない選択肢には異なる得点をつけます。この得点をカテゴリースコアといいます。

数量化3類のためのアンケートデータ

数量化3類を理解するために、簡単なアンケートの回答選択肢と回答データを示します。

具体例

カテゴリースコア、サンプルスコア

数量化3類は、飲まれ方が似ているお酒には類似した得点を、飲み方が似ている人には類似した得点をつけます。

回答選択肢(カテゴリー)や回答者(サンプル)を得点化します。
お酒の得点をカテゴリースコア、回答者の得点をサンプルスコアといいます。
どちらも2個の得点が付けられます。 2個の得点を1軸、2軸といいます。

縦軸に1軸のカテゴリースコア、横軸に2軸のカテゴリースコアをとり点グラフを作成します。
点グラフの点の配置から軸を解釈します。

1軸 「和酒が好きか」「洋酒が好きか」を判別する軸
2軸  アルコール度数が「弱い酒が好きか」「強い酒が好きか」を判別する軸

縦軸に1軸のサンプルスコア、横軸に2軸のサンプルスコアをとり点グラフを作成します。

軸の名称はカテゴリスコアグラフと同じです。

  • 和酒(焼酎と日本酒)が好きな石田と工藤は同じ位置
  • 洋酒(ウイスキーとビール)が好きな大竹と佐藤は同じ位置
  • ウイスキーだけが好きな小林は左下に位置
  • 回答が全く異なる武田と小林は離れた位置

クラスター分析

クラスター分析は平面あるいは空間にプロットされた個体間の距離を調べ、距離の近い個体を集めて集落(クラスター)を作り、個体を分類する方法です。

個体間の距離の近さを樹形図で表します。
樹形図は個体間の距離を縦線の高さで表しています。

具体例のサンプルスコアのグラフを見ると、石田と工藤、大竹と佐藤は距離が短いので樹形図の縦線の高さは低くなっています。小林はどの個体からも遠いので縦線の高さは最も高くなっています。

グループ数とグルーピング

グループの個数は分析者が設定します。

具体例のグループ数を3とします。
樹形図に横線を引きます。縦線との交点が定めたグループ数となるように引きます。
縦線と横線の交点から下に位置する個体を同じとします。

セグメント別人数

回答者は3個のセグメントに分類されました。

セグメント別人数、割合を計算します。

セグメントのネーミング

セグメントには名前を付けます。

ネーミングは、数量化3類に適用データとセグメントとのクロス集計の結果を用います。

セグメントとお酒とのクロス集計をしました。
お酒嗜好の割合から、セグメントの名前を付けます。

セグメント1

焼酎100%→和酒派

セグメント2
ウイスキー100%→洋酒派

セグメント3
ビール100%→ビール派

事例を用いて、多変量解析を適用して消費者をセグメンテーションし、関係をしらべてみましょう。

調査設計

①背景

生活態度、購買行動と新製品選択との関係を明らかにしたいことがあります。しかしながら人々の生活態度、購買行動は多種多様で、両者の因果関係の解明はやっかいなテーマといえます。そこで多変量解析を適用して消費者セグメントし、新製品選択との関係を調べることにします。

②目的

どのようなセグメントに属する人が、どのような新製品を嗜好するかを明らかにすることを目的とします。

③調査対象

20才以上59才以下の男女

④調査方法

インターネットWeb調査

⑤調査対象者の名簿

データベースを保有している会社の名簿

⑥サンプルサイズ

410人

※480人のデータを回収したが、不良な回答を除いて有効サンプルは410人となりました。

⑦標本抽出法

層別抽出法

データベースに登録している100万人を性別年代別の8グループに分類し、各グループに調査票を無作為に配信

⑧有効サンプルの内訳

調査票

消費者基本属性

血液型の割合を調べると、割合の大きい順に、A型35%、O型25%、B型22%、AB型18%でした。

所得分布を調べると、399万円未満の割合は38%、400~799万円は37%、800万円以上は25%でした。年齢別の所得を調べると、年齢が高くなるほど所得が高くなる傾向が見られました。

生活態度

価値観、生活態度に関する29項目を示し、あなたの考えや行動に近いものはどれかを複数回答で聞きました。

各項目の回答率を調べると、回答率が30%以上の項目数は3個、20%台は12個、10%台は10個、10%未満は4個でした。

ちなみに回答率が30%以上の項目は「興味追及」、「周りを気にする」、「初対面と慣れる」でした。

価値観、生活態度に関する29項目の類似点

価値観、生活行動に関する29項目に数量化3類を適用しました。軸の重要度を示す相関係数が0.5以上の軸を採択しました。

1軸を縦軸、2軸を横軸にとり、カテゴリースコアの散布図を作成しました。
枠内の名称は後ほど掲載しております「グループの概要」の分析をもとにつけたものです。

人々のグルーピング

1軸を縦軸、2軸を横軸にとり、サンプルスコアの散布図を作成しました。

サンプルスコアのプロットが近い人を、クラスター分析によってグルーピングしました。グループを生活態度タイプと呼ぶことにします。

各タイプの配置は前ページのカテゴリースコアの配置と対応します。

グループの概要

下記表の①~④の列の数値は、各グループにおける29項目の単純集計の回答率です。回答率を横に見て最大に彩色しました。最大値と全体との差を計算し、差が15ポイント以上の項目に着目しました。

回答率の高い項目は次のとおりです。

家康(A型)タイプ

「周りの意見を気にしやすいほうである」、「相手の気持ちに対して敏感なほうである」

秀吉(O型)タイプ

「いろいろな人とすぐ親しくなれるほうである」、「人から陽気だと思われている」、「あちこち歩き回って物を見たり探したりするのは苦にならない」、「他人の行動を見て許せないと感じることが多い」

信長(B型)タイプ

「自信を持って自分の考え方が言えるほうである」、「自分勝手なところが目立つときがある」、「人を説得することが上手であると思う」

三成(AB型)タイプ

「好奇心が強く、何でも試してみたいほうである」、「相手が話しているのについ口をはさんでしまう」、「自分の意見をはっきり相手に伝えるほうである」、「興味のあることはとことん追いかけるタイプである」

生活態度タイプの名称は、上記の解釈と次の分析より行いました。

属性別のグループ規模割合

どのような属性の人でどのような生活態度タイプの割合が大きいかを調べました。

生活態度タイプの割合は男性と女性では差が見られませんでした。

年齢別では、20才代は「秀吉(O型)」と「信長(B型)」、30才代は「三成(AB型)」、40才代以上は「家康(A型)」が他年齢層を上回る割合を示しました。

血液型と生活態度タイプは、A型で家康、O型で秀吉、B型で信長、AB型で三成の割合が高くなる傾向がみられました。
この傾向より、タイプ名の後尾に血液型を表記しました。

新製品意向

新製品の関心度、使用意向度

携帯電話新製品の使用意向を聞きました。B製品の使用意向が31%で最も高い割合を示しました。他3製品の使用意向は21~25%で大きな差は見られませんでした。

生活態度タイプの携帯電話新製品の使用意向度

生活態度タイプ別の携帯電話新製品の使用意向度を調べました。

家康(A型)タイプはC製品(シンプル・使いやすい)、秀吉(O型)タイプはA製品(スタイル・外観が良い)、信長(B型)タイプはB製品(機能が豊富)、三成(AB型)タイプはD製品(コンパクト・軽量)の意向率が他タイプに比べ高い値を示しました。

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