母分散と比較値の差の検定

母分散と比較値の差の検定の概要

母分散と比較値の差の検定は、1項目(1群)のデータの標本分散と解析者が指定する比較値から、母分散が比較値と異なるかを検証する検定方法である。
母分散の検定は母集団におけるデータが正規分布である場合に適用できる。

母分散と比較値の差の検定は次の手順によって行う。

母分散と比較値の差の検定手順

①帰無仮説を立てる

母分散は比較値と同じ

②対立仮説を立てる

次の3つの内のいずれかにする

(1)母分散は比較値より大きい

(2)母分散は比較値より小さい

(3)母分散は比較値と異なる

③両側検定、片側検定を決める

対立仮説によって自動的に決まる

対立仮説
母分散は比較値より大きい→片側検定(右側検定)
母分散は比較値より小さい→片側検定(左側検定)

対立仮説
母分散は比較値と異なる→両側検定

④検定統計量を算出

検定統計量は帰無仮説の基に自由度n-1のχ2分布(カイ2乗分布)にしたがう。

⑤p値を算出

⑥有意差判定

p値<有意水準0.05(5%)
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択→有意差があるといえる。
有意水準は通常5%を適用するが1%を用いることもある。

※有意水準0.05と0.01から有意差判定を次のように行うこともある。

p値<0.01 [**]  有意水準1%で有差がある
0.01≦p値<0.05[* ]  有意水準5%で有意差がある
p値≧0.05 [ ]  有意差があるがあるとはいえない

母分散と比較値の差の検定の結果

具体例

ある機械の部品の新製法が開発された。その製法によって作られた部品からランダムに11個を取り出し、重量の標準偏差を計算したところ、42gだった。基準としている重量の標準偏差は30gである。

次の3つの仮説検証について検定せよ。
(1)新製法によって重量のバラツキが30gより大きくなったといえるかを調べよ。
(2)新製法によって重量のバラツキが30gより小さくなったといえるかを調べよ。
(3)新製法によって重量のバラツキは30gと異なるかを調べよ。

検定結果

(1)対立仮説:重量のバラツキは30gより大きい→右側検定を適用

p値 0.0333<有意水準0.05
重量のバラツキは30gより大きいといえる


(2)対立仮説:重量のバラツキは30gより小さい→左側検定を適用 

p値 0.9667>有意水準0.05
重量のバラツキは30gより小さいといえない


(3)対立仮説:重量のバラツキは30gと異なる→両側検定を適用 

p値 0.0665>有意水準0.05
重量のバラツキは30gと異なるといえない

母分散と比較値の差の検定の検定統計量はχ2分布になることを検証

ある機械の部品の新製法が開発された。その製法によって作られた部品が10,000個ある。10,000個の部品を母集団とする。母平均は100g、母標準偏差は30g、母分散900g2である。

母集団は正規分布である。

検定統計量の算出

母集団(10,000個の部品)から11個をランダムに抽出する調査を実施し、標準偏差、検定統計量を算出した。ただし検定統計量算出式に用いる比較値は母分散900g2とする。この調査を2,000回行い2,000個の検定統計量を求めた。

<計算例>
調査No1の検定統計量
標準偏差で与えられている値を分散に直す

比較値=900 標本分散=612

2,000回の標本調査の検定統計量を示す。

検定統計量の度数分布を作成した。

度数分布のグラフを描いた。

度数分布は自由度n-1=10のカイ2乗分布(χ2分布)になる。
検定統計量は、帰無仮説「部品重量の母分散は900g2である」という仮説のもとにχ2分布になる。


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