母分散の比の検定の概要
母分散の比の検定は、2項目(2群)のデータの標本分散から、母集団における2項目(2群)の分散は異なるかを検証する検定方法である。
母分散の比の検定は母集団におけるデータが正規分布である場合に適用できる。
母分散の比の検定手順
母分散の比の検定は次の手順によって行う。
2項目(2群)をA、Bとする。
①帰無仮説を立てる
母分散Aと母分散Bは同じ。
②対立仮説を立てる
次の3つの内のいずれかにする。
(1)母分散Aは母分散Bより大きい
(2)母分散Aは母分散Bより小さい
(3)母分散Aと母分散Bは異なる
③両側検定、片側検定を決める
対立仮説によって自動的に決まる。
対立仮説
母分散Aは母分散Bより大きい→片側検定(右側検定)
母分散Aは母分散Bより小さい→片側検定(左側検定)
対立仮説
母分散Aと母分散Bは異なる→両側検定
④検定統計量を算出

検定統計量は帰無仮説の基に自由度f1=n1-1、f2=n2-1の F分布にしたがう。
n1はA群のサンプルサイズ、n2はB群のサンプルサイズである。
⑤p値を算出
⑥有意差判定
p値<有意水準0.05
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択→有意差があるといえる。
有意水準は通常5%を適用するが1%を用いることもある。
母分散の比の検定の結果
具体例
ある学校において、ランダムに男子17人、女子15人を選び、1年間の2重飛びの標準偏差を調べたら4回、8回だった。
次の3つの仮説検証について検定せよ。
全生徒の2重飛びのデータは正規分布であるとする。
検定結果
(1)対立仮説:男子の方が女子より大きい→右側検定を適用

p値 0.9952>有意水準0.05
2重飛びのバラツキは、男子の方が女子より大きいがいえない。
(2)対立仮説:男子の方が女子より小さい→左側検定を適用

p値 0.0048<有意水準0.05
2重飛びのバラツキは、男子の方が女子より小さいがいえる。
(3)対立仮説:男子と女子は異なる→両側検定を適用

p値 0.0097<有意水準0.05
2重飛びのバラツキは、男子と女子は異なるがいえる。
母分散の比の検定の検定統計量はF分布になることを検証
あるエリアの中学生全生徒数は男子10,000人、女子10,000人である。縄跳びの2重飛び回数の標準偏差は男子6回、女子6回で同じである。
全生徒のデータを示す。

母集団は正規分布である。


検定統計量の算出
母集団男子10,000人から17人、女子10,000人から15人をランダムに抽出する調査を実施し、標準偏差、検定統計量を算出した。この調査を1,000回行い1,000個の検定統計量を求めた。
<計算例>
調査No1の検定統計量
標準偏差で与えられている値を分散に直す
男子:標本標準偏差=5.2 標本分散=27.0
女子:標本標準偏差=5.6 標本分散=31.4
検定統計量=男子標本分散/女子標本分散=27.0/31.4=0.86
1,000回の標本調査の検定統計量を示す。
検定統計量の度数分布を作成した。

度数分布のグラフを描いた。
自由度16,14のF分布を描いた。

度数分布は自由度16、14のF分布に一致する。
検定統計量は、「男子分散と女子分散は等しい」という帰無仮説のもとにF分布になる。