1標本母比率検定の概要
1標本母比率検定は、一つの母集団から無作為抽出したサンプルの標本割合や標準誤差からp値を算出し、母集団の割合は分析者が定めた比較値と異なるかをp値で判定する方法である。この検定手法は1群z検定と呼ばれることもある。
この検定は帰無仮説が正しいと仮定した場合に、サンプルの標本割合や標本標準偏差から計算された検定統計量がz分布(標準正規分布)に従うことを利用する統計学的検定法である。
検定の手順
①比較値を定める
②帰無仮説を立てる
母集団の割合と比較値は同じ。
③対立仮説を立てる
次の3つの内のいずれかにする。
(1)母集団の割合は比較値より大きい
(2)母集団の割合は比較値より小さい
(3)母集団の割合と比較値は異なる
④両側検定、片側検定を決める
③で選んだ対立仮説によって自動的に決まる
対立仮説(1)→ 片側検定(右側検定)
対立仮説(2)→ 片側検定(左側検定)
対立仮説(3)→ 両側検定
⑤検定統計量を算出

⑥p値の算出
検定統計量は検定統計量は帰無仮説が正しいと仮定した場合にz分布に従う。
z分布において、横軸の値が検定統計量であるときの上側の面積をp値という。
片側検定におけるp値はt分布における検定統計量の上側確率である。
両側検定におけるp値はz分布における検定統計量の上側確率の2倍である。

⑦p値による有意差判定
片側検定(右側検定、左側検定)、両側検定いずれも
p値<有意水準0.05
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択 有意差があるといえる。
p値≧有意水準0.05
対立仮説を採択できず、有意差があるといえない。
※有意水準は0.05が一般的であるが、0.01を適用することもある。
※有意差判定を次で示すこともある。
p値<0.01 | [**] 有意水準1%で有差がある |
0.01≦p値<0.05 | [* ] 有意水準5%で有意差がある |
p値≧0.05 | [ ] 有意差があるがあるとはいえない |
1標本母比率検定の結果
具体例
商品Aの知名度が25%を超えることを目標としている。
ある都市全体を対象として商品Aの告知活動を行ったあと、そこに住む64人を無作為に抽出して調査したところ、商品Aを知っている人は24人で認知率は37.5%だった。
検定結果
右側検定を適用する。

p値<0.05より、この都市全体の商品Aの認知率は25%を超えたといえる。
この問題は右側検定であるが、両側検定をした場合の結果を示す。

p値<0.05より、この都市全体の商品Aの認知率は25%と異なるといえる。
この判定と「標本割合37.5%>比較値25%」より、この都市全体の商品Aの認知率は25%を超えたといえる。