1標本母平均検定の概要
1標本母平均検定は、一つの母集団から無作為抽出したサンプルの標本平均や標本標準偏差からp値を算出し、母平均は分析者が定めた比較値と異なるかをp値で判定する方法である。この検定手法は1群t検定と呼ばれることもある。
この検定は下記条件の基に帰無仮説が正しいと仮定した場合に、サンプルの標本平均や標本標準偏差から計算された検定統計量がt分布に従うことを利用する統計学的検定法である。
- サンプルサイズは30以上である
- 母集団は正規分布に従っている(母集団の正規性)
母集団の正規性については、この検定方法は頑健だといわれている。それは、サンプルサイズが30以上であればば母集団が正規分布でなくとも検定統計量はt分布に近づくからである。
サンプルサイズが30に満たない場合は、ノンパラメトリック検定を適用する。
検定の手順
①比較値を定める
②帰無仮説を立てる
母平均と比較値は同じ。
③対立仮説を立てる
次の3つの内のいずれかにする。
(1)母平均は比較値より大きい
(2)母平均は比較値より小さい
(3)母平均と比較値は異なる
④両側検定、片側検定を決める
③で選んだ対立仮説によって自動的に決まる。
対立仮説(1)→ 片側検定(右側検定)
対立仮説(2)→ 片側検定(左側検定)
対立仮説(3)→ 両側検定
⑤検定統計量を算出

⑥p値の算出
検定統計量は帰無仮説が正しいと仮定した場合にt分布に従う。
t分布において、横軸の値が検定統計量であるときの上側の面積をp値という。
片側検定におけるp値はt分布における検定統計量の上側確率である。
両側検定におけるp値はt分布における検定統計量の上側確率の2倍。

⑦p値による有意差判定
片側検定(右側検定、左側検定)、両側検定いずれも
p値<有意水準0.05
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択 有意差があるといえる。
p値≧有意水準0.05
対立仮説を採択できず、有意差があるといえない。
※有意水準は0.05が一般的であるが、0.01を適用することもある。
※有意差判定を次で示すこともある。
p値<0.01 | [**] 有意水準1%で有差がある |
0.01≦p値<0.05 | [* ] 有意水準5%で有意差がある |
p値≧0.05 | [ ] 有意差があるがあるとはいえない |
1標本母平均検定の結果
具体例
ある県の小学校の生徒数は10,000人である。
この県の小学生全体のお年玉平均金額を調べるためにn=50の標本調査を行った。
標本平均は33,000円、標準偏差は15,000円だった。
検定結果
(1)右側検定

p値<0.05より、
お年玉金額の母平均は28,000円より高いがいえる。
(2)左側検定

p値>0.05より、
お年玉金額の母平均は28,000円より低いがいえない。
(3)両側検定

p値<0.05より、
お年玉金額の母平均は28,000円と異なるがいえる。