母相関係数の差の検定の概要
母相関係数の差の検定は、2個の標本相関係数から、母集団における 2個の相関係数は異なるかを検証する検定方法である。
母相関係数の差の検定には3つのタイプがある。
タイプ1 対応のない場合
サンプルが別の集団の2個の相関係数「r1」と「r2」を比較する。
中学3年の成績と学習時間との相関 r1
中学1年の成績と学習時間との相関 r2

タイプ2 対応のある場合(1)
3つの項目a、b、cで「aとbの相関r1」と「aとcの相関r2」を比較する。
共通項目aがある場合の検定である。
国語得点と数学得点との相関係数 r1
国語得点と物理得点との相関係数 r2

タイプ3 対応のある場合(2)
4つの項目a、b、c、dで「aとbの相関r1」と「cとdの相関r2」を比較する。
共通項目がない場合の検定である。
英語得点と国語得点との相関係数 r1
数学得点と物理得点との相関係数 r2

母相関係数の差の検定は次の手順によって行う。
母相関係数の差の検定の手順
①帰無仮説を立てる
②対立仮説を立てる
次の3つの内のいずれかにする。
(1)母相関係数r1はr2より大きい
(2)母相関係数r1はr2より小さい
(3)母相関係数r1とr2は異なる
③両側検定、片側検定を決める
対立仮説によって自動的に決まる。
対立仮説(1)→片側検定(右側検定)
対立仮説(2)→片側検定(左側検定)
対立仮説(3)→両側検定
④検定統計量を算出
⑤p値の算出
⑥有意差判定
p値<有意水準0.05(5%)
帰無仮説を棄却し対立仮説を採択する。
母相関係数r1とr2は異なる(あるいは大きい、小さい)がいえる。
p値≧ 有意水準0.05(5%)
帰無仮説を棄却できず対立仮説を採択しない。
母相関係数r1とr2は異なる(あるいは大きい、小さい)がいえない。
検定統計量
タイプによって異なる。



p値
タイプ1 対応のない場合 | z分布の上側確率 |
タイプ2 対応のある場合(1) | 自由度n-3のt分布の上側確率 |
タイプ3 対応のある場合(2) | z分布の上側確率 |
母相関係数の差の検定の結果
具体例
ある中学校で学習時間と成績の相関係数を調べた。
中学3年生20人の相関係数は0.8945、中学1年生18人の相関係数は0.5192だった。
検定結果
タイプ1対応のない場合の検定です。

p値0.0142<0.05より
学習時間と成績の相関係数は中学3年生と中学1年生で異なるといえる。
具体例
ある中学校3年生の3教科相互の相関係数を調べた。

検定結果
タイプ2対応のある場合(1)の検定です。

p値0.3335>0.05より
国語と数学の相関係数と国語と物理の相関係数は異なるといえない。
具体例
ある中学校3年生の4教科相互の相関係数を調べた。

検定結果
タイプ3対応のある場合(2)の検定です。

p値0.6617>0.05より
英語と国語の相関係数と数学と物理の相関係数は異なるといえない。